最終回は、消費税の導入や税率引き上げの陰で、価格決定権を持たない免税事業者がどのような状況になっていたのか、私の実体験も交えてお伝えしたいと思います。

例えば、消費税導入前に、対価 1万円で受けていた仕事があったとします。 これが、消費税(3%)が導入された時には、そのまま 1万円となりました(→ 本来は、本体 1万円 + 消費税3%とするべきでしたが)。 ・・・物を買うわけでもないのに消費税かかるの? とか、消費税納めるほど儲かってないので(年商3千万未満)など、仕事を出す側も受ける側もよく分かっていなかったことで、こんな状況は割と多かった、と思っています。

そして、5%に引き上げられるとき、同じような対応の取引は多くありましたが、5%上乗せとなった取引もあります。 それが 8%に引き上げられるときには税制の理解も進み、多くの取引が 8%上乗せとなっていきました

・・・ここで問題となるのが、本体価格はいくらなのか? ということ。

本来、本体価格は 1万円であったはずなのに、これまでの取引で消費税を上乗せしなかったということは、消費税込みの取引だったとされてしまいます。

つまり、消費税 5%に引き上げられた時に是正されたのなら、 1万円(3%税込み) → 本体 9,709円。  消費税 8%に引き上げられた時に是正されたのなら、 1万円(5%税込み) → 本体 9,524円。 ・・・これを本体 1万円とすると、過去に遡って精算しなくてはならないため、無言の圧力免税事業者だし(収入金額は変わらないし)、ということで値引きを受け入れることになります

その後は、例えば、本体 9,709円 + 消費税5% = 10,194円(益税194円)、本体 9,524円 + 消費税8% = 10,285円(益税285円)、本体 9,524円 + 消費税10% = 10,476円(益税476円)・・・のように、免税事業者である内は益税が発生します(→消費税分が儲かる反面、所得税・住民税等の負担が増えるため、実際には儲かっていないかと)。

さてここで、インボイス制度施行により免税事業者でなくなった場合、、、本体 9,524円が基準となるため、仮に、サービス業で簡易課税で納付すると、本体 9,524円 + 消費税10% = 10,476円 から、消費税納付:9,524円 × 10% × 50% = 476円で、差し引くとちょうど本体 1万円の取引となります(→益税分は是正されます)。

ただこれは、消費税 8%に引き上げられた時に是正された場合であって、今まで是正されずにきた取引については、1万円(10%税込み)→ 本体 9,091円となるため、消費税納付:9,091円 × 10% × 50% = 454円で、この金額がそのまま収入減となってしまうのです。

個人的には、益税が発生することへの批判は理解できるので、免税事業者自体の廃止は良いと思っていますが、、、税込み価格として見えない値引きをさせられてきた取引については 大元の本体価格に是正するなど、この辺りは強制力を持って同時にやっていただかないと、生活が立ち行かない個人事業主が出てくるだろう、と思っています。

ちなみに、上記の 本体 9,524円の例で、消費税10%ならちょうど本体 1万円で損益は発生しませんが、、、消費税 12%に引き上げられると、95円の収入減となってしまいます。。。

免税事業者を批判する投稿をよく見ますが、、、益税が発生しても所得税・住民税等の納付額は増える免税事業者であることを楯に、税率が上がる度に本体価格が値引きさせられている事業者大勢いる・・・こうした背景にも目を向けていただきたいなと思っています。

(おわり)

第1回は、下記の写真をクリックすると開きます↓↓↓

インボイス制度 施行(2023年10月1日)(第1回)

東京の中小企業診断士のコラム。いよいよ10/1から施行されるインボイス制度。個人的に思うところを、5回に分けてお伝えします。ちなみに、私は「適格請求書発行事業者」と…