今、多くの人は下りのエスカレーターに乗っているはずです。 黙って立っていればドンドン下に、上に行こうと歩みを進めればその位置を維持することができ、さらに足を速く動かせば少しずつ上に・・・私がセミナーなどでお話しするエスカレーター理論の一節です。

悲しいことに、多くの人は、前進しなければ必然的に下がっていく経営環境の中にいます。 その中で、これまでの延長線上の努力ではない新しい視点での努力=「経営革新」により現状を打開する・・・ここ数年、経営革新による新たな取り組みを試みる企業が増えています。

「それは本当に前進ですか? 逃避ではありませんか?」

経営革新について、基本的には大賛成です。 私も多くの支援の中で、「経営革新」という言葉は使わないまでも、視点を変えて考えることを説いています。 しかしながら、あくまでも前進するためであって、逃避のためではない・・・ということが大前提にあります。

行き詰まっているのは事実ですが、まだまだ既存事業の中でもやれることが残されているということも事実です。 私は、新しいことに目をやる以上に、足元に目を落とすことが大切だと思っています。 新しいことを始めようとする前に、なぜ新しいことに目を向けるのか・・・今一度自身に問いかけていただきたいと思っています。

そうはいうものの・・・

様々な苦難に見舞われる中、現実的には、逃避することが必要な場面もあると思います。 ただ、今そうするべきなのかどうかは、時期やタイミングによります。 ですから、「前進」に必要な一過程として「逃避」の支援をすることもあります。 一方で、逃げてはいけない時に逃げようとする経営者には、大変厳しい言葉を投げつけることもあります。

ちょうど先日、後者のような支援をした企業があるのですが、その後、経営者は真正面から現実と向き合い、既存事業の建て直しのための事業計画を策定するまでに至りました。 相対する中で、踏みとどまることができる経営者には、折れずに最後までやり遂げる底知れない強さがあることを改めて感じました。

今後のさらなる飛躍を心から期待するとともに、多くの企業でもこのような支援成果に辿り着けるよう、共に歩みを進めたいと思っています。