思い浮かべてみてください。 そこは、婦人服を扱うブティック・・・地方の商店街の一角に位置し、その地域にしては高級な商品を扱っていました。 かつては、多くの人が集まるその町の中心地。 しかし、現在では過疎化が進み、商店街もシャッター街となり、中心地としての機能は果たしていません・・・当然、経営も成り立っていません。
さて、このような状態となって早10年以上が経過。 これまでは借入によって経営を続けていたものの、この不況下では金融機関側もそろそろ限界・・・1年前の借入時に既に最後通告を受けていました。 しかしながら、既に資金はなく、金融機関に泣きつくもこれ以上は貸せないとの返答。 ・・・このような企業があったとします。
ここで問題です。 金融機関は相応の資金を融資し続けてくれていたのですが、その資金は一体どこに消えたのでしょうか?
ほとんど売上(利益)が立たない状況ですから、一つは 「お店の維持費(家賃、水道光熱費、人件費)」 として消えてなくなります。 そして、もう一つは 「在庫」 です・・・つまり、お金が商品に姿を変えてお店に留まっている状態です。
今回のようなケースでは、目前に資金ショートが迫っていますから、手をこまねいていてはそのまま倒産となります。 実際問題、今後も経営を継続できる状態ではありませんが、少なくともソフトランディングしなければなりません。 そのためには、「現金」 をかき集めてでも工面する必要があるのですが、在庫処分による換金を提案すると、まず間違いなく経営者の強固な反対にあいます。
「私の思いがこもった商品を安く処分することはできない!」 「安売りしなくても、取っておけばいつかきちんと売れる!」
このような経営者は、2つの認識を持つ必要があります。 まず、①商品は売り物である・・・ ということです。 アパレル業界では往々にして見られるのですが、商品に気持ちが入り過ぎてしまい 「売り物」 である意識が希薄になっていることがあります。 売り物であるのだから、どんなに素敵な服だと思っていても、売れなければその価値はないのです。 ですから、何年も置いてある不動在庫の価値はゼロなのです。
そして、②服は腐る・・・ ということです。 服には 「流行」 という価値があります。 年を経るごとにその価値が劣化していくというのが道理です(プレミアが付く類の商品は例外)。 例えば、ベーシックなジャケットといっても、トレンドによりラインは大きく変わりますし、襟の大きさ着丈なども微妙に変わっています。 トレンドカラーが違えば、コーディネートもできなくなります。 また、保管状態を適切に保たなければ、物理的に劣化していきます。 例えば、合皮やウレタン素材などは、5-6年もすれば商品として用をなさなくなります。 同様に、何年も置いてある不動在庫の価値はゼロなのです。
これらは、アパレル業界だけでなく、多くの業界でも同じように言えます。
皆様のお店では、年々在庫が増えていませんか? いつまでも動かない在庫が眠っていませんか?