日頃 支援をする中で、上手く改善が進む企業もあれば そうでない企業も ・・・ 経験を重ねる中で、なんとなく共通点を感じています。

それは、どれだけ 「自己否定」 ができるかどうか。 正しく自己否定できる人は改善が早く進み、そうでない人は改善が進まない(頓挫する) というものです。

まず、改善の妨げとなるものが、過去の成功体験です。

成功したことで今がある ことに違いはないのですが、残念ながら 過去は過去。 その成功体験が 今通用していないからこそ、今苦しい状況にあるのです。 ですから、まず、過去の成功体験を捨てることから始めて欲しいのです。

そして、ここで大切なことは、正しく否定するということ。

過去の成功体験を否定されると、多くの場合、自身の経験や人格さえも否定されたと受け取り、そうした言葉には耳を傾けません。 意固地になって耳を閉ざし、反論に留まらず 激高する人さえもいます。

しかし、否定するのは、「過去の成功体験が今の時代に合わない」 ということのみ。 成功体験そのもの(当時の先進的な考え方、努力、決断、得られた成果などなど) は、今でも称賛に値するものです。 何を否定するべきなのかを、分けて(正しく) 考えて欲しいのです。

繰り返し過去の成功体験を語り、新しい考え方は遠ざけるというような過去にしがみつく態度は、自ら過去の栄光を汚していることに気づいて欲しいのです。 そのようなことにも気づかず、周囲の言葉に耳を傾けようとしない内は、残念ながら 一歩も前に進むことができません。

例えば、薄利多売で業界を席巻してきた企業があるとします。 やがて市場は成熟し、数が売れない時代になりました。 当然のことながら、このまま同じやり方をしていたのでは、薄利少売となり 経営が成り立ちません。

ですから、多売となるように新たな市場を開拓するのか、少売でも成り立つように厚利に転換するのか、はたまた、薄利少売でも成り立つように徹底的に固定費を圧縮するのか・・・いずれにしても、これまでのやり方を一度否定しなければ、先には進めません。

ただ、否定するのは、「同じやり方が通用しない」 ということだけであって、業界を席巻したという栄光は大切にしまっておけば良いのです。

経営改善の場にあっても、昨今の 褒めて育てる風潮というのか、否定してはならないという風潮というのか、「甘言」 が飛び交っているように感じています。 それで窮地を脱することができるならばそれで良し。 脱せていないのであれば、「正しく否定する」 ということを思い出していただきたいと願っています。