ビジネスモデルとは、簡単にいえば 「どのようにして収益を得ているのかを端的に示したもの」 で、「顧客」 「価値」 「経営資源」 の 3つの要素で表すことができます。 これは、大企業だけでなく 中小企業や小規模事業者にも 当然にあるものです。

例えば、住宅街にある昔ながらのクリーニング店。 不特定多数の人が訪れるような場所ではないため、基本的には既存客で成り立っています。 すると、このお店のビジネスモデルは、馴染みのお客様に対して、汚れやシワが付いた衣料品を、職人の汚れ落としと仕上げの技術で再生することによって収益を得ている といえます。 加えて、店頭での何気ない会話を通じて人との触れ合いを感じてもらうことで (また来たいと思ってもらえることで)、安定的な収益の確保につなげているといえます。

ここで、後継者に店を任せようとしたときに、後継者の技術レベルは経営者を上回るものの、コミュニケーション力が弱かったらどうでしょうか。 安定的な収益の確保に必要なコミュニケーション力が弱いのですから、経営は不安定になりますね。 ・・・ということは、コミュニケーション力を高めてから店を任せるか、コミュニケーション力が弱いままでも安定的に来店してもらえるような 「新たなビジネスモデル」 を考えなければなりませんね。

例えば、住宅街にある昔ながらの洋菓子店。 こちらも不特定多数の人が訪れるような場所ではないため、基本的には既存客で成り立っています。 すると、このお店のビジネスモデルは、馴染みのお客様に対して、定番商品と四季折々の楽しさを感じさせる商品を、いつまでも変わらぬ味で提供することによって収益を得ている といえます。 加えて、こちらも同様に、コミュニケーション力によって安定的な収益の確保につなげています。

ここで、後継者が、有名店や高級ホテルで出されるような感度の高い新商品を次々と出すことを志向するとどうでしょうか。 安心感のある定番商品が少なくなることで 敬遠されるお客様がいる反面、新たな魅力を受け入れこれまで以上に来店されるお客様がいたり、これまで敬遠して来店しなかったお客様が来店されるようになることもあるでしょう。 このようなマイナス要素とプラス要素を合算して、トータルでプラスになればビジネスモデルの再構築に成功したことになり、マイナスになれば再構築に失敗したことになります。 (再構築に失敗した場合は、早急に再々構築の手立てを考えなければなりません)

このように、事業承継の際には、これまでのビジネスモデルが崩れることが往々にして起きるものです。 新しい代に切り替わるのですから、新しいビジネスモデルに転換することも良いと思いますが、その一方で経営は継続という側面があります。 再構築の際には、①利用していただいているお客様に想いを巡らせること、②再構築したビジネスモデルで (本当に)収益が安定的に得られるのかを 様々な方面から検討すること ・・・ にご留意の上、行動に移していただきたいと思っています。