先日、テレビで 「後医は名医」 という言葉を耳にしました。 それは、後から診察する医師ほど、これまでの病状や検査などの経過を確認することができるため (より多くの情報があるため)、正確な診断をつけられるというものです。

出演していた医師は、「後医は名医ではダメ。 ちょっとした兆しや症状の変化に気付き、容体が悪くなる前に適切な処置ができるようにならないといけない。」 と話していました。

それで フト思い出したのが、統計学を教えてくれた 恩師 K先生の言葉。 「分析だけでは意味がない。 分析結果から将来を予見することに分析の意義がある。」

当時は分析することが面白く、主成分分析やら因子分析やら、統計手法を駆使して物事を構造的に明らかにしていくことだけで満足していたため、「将来を予見する」 という言葉に衝撃を受けたことを 今でも覚えています。

独立開業する前にそうした教えを受けたことで、日常起きていることの推移を細かく診る、後にその結果に至った原因を考える ・・・などの細かな分析を (知らず知らず) 重ねるようになり、約 8年も続けていると、随分と 「将来を予見させる日常の兆し」 が見えてくるようになってきたと思っています。

しかしながら、「予見力」 が発揮できたのは、残念ながら 3割程度。

多くの場合、その企業にとって 「まさか」 ということを伝えるため 中々本気で取り合ってもらえず、兆しが見える形になった頃には手遅れ。 ・・・後になって、「あのとききちんと聞いていれば」 と言われるケースをいかに減らすかが私の大きな課題です。

例えば、人が強みと自負する会社で、社員が問題を起こす兆しがあるため個人面談を行うように という助言。 例えば、業界で話題の人気商品を扱う会社で、来年は一気に売れなくなるため対策を考えるようにという助言。 例えば、売上が急上昇している会社で、1-2年内には伸びが止まるため足元を固めるようにという助言。

「まさか」 と思うことでも、いくつかの兆しを組み合わせて考えると、高い確率で 「そうなる」 ことが予見されるのです。

いかに兆しに気付き、将来を予見し、そうならないように手が打てるか ・・・ 先行きの見え難い昨今の経営環境にあって、「予見力」 は、経営者に一番求められる能力だと思っています。