経営者と話していると、部下に指示したのにできない、伝わらないなどという嘆きをよく耳にすることがあります。 そんな時は、どのように指示したのか確認した上で、それが次のどれに当てはまるのか考えていただいています。

①号令: 具体的な指示を出す

②命令: 意図することを伝えた上で具体的な指示を出す

③訓令: 目的や目標を伝え、具体的な手段や方法は任せる

どれも 「指示」 なのですが、微妙に指示の仕方が異なることが分かると思います。 このように、指示する側も、どのような指示をしたのか意識した上で指示することが求められます。

よく見られるのは、経験の浅い者に対して 「命令」 や 「訓令」 を用いることで起きる期待値と成果のギャップです。

例えば、「大切なお客様がいらっしゃるので準備をお願いします」 と 「訓令」 したとします。 経験が浅い社員ですと、「何をどうしたらよいか分らない」 ということで、お茶さえも用意していないという事態が起こり得ます。

例えば、「大切なお客様がいらっしゃるので、隣の和菓子屋で饅頭でも買ってきて」 と 「命令」 したとします。 もし饅頭が売り切れていても、経験のある社員ですと何か同じようなものを買ってくるでしょう。 しかし、経験の浅い社員ですと、売り切れていたため手ぶらで帰ってくるということが起こり得ます。

つまり、この社員には 「まんじゅうがなかったらどらやきを、どらやきがなかったらきんつばを、それもなかったら電話してください」 などと 「号令」 をしなければならなかったということなのです。

では、何から何まで 「号令」 しなければならないのでしょうか? ・・・そうなのです、「号令」 しなければならないのです。 「そんなことも分からないのか?」 と思われている方・・・残念ながら、分からないのです。 子供と一緒・・・育てるということをしなければ、分かるようにはならないのです。

例えば、最初は 「号令」 で指示を出します。 日頃、言われたことさえもできないと嘆いている経営者もいると思いますが、その社員は 「号令」 の訓練を受けずに育ったからできないのです。 まずは言ったことが正しくできるよう、基本となる 「号令」 を繰り返し行います。

それができるようになったら、「号令」 の中に 「命令」 を混ぜることで、社員の判断力を養っていきます。 そして、徐々に 「命令」 の割合を増やしていきます。

さらに、それができるようになったら、「命令」 の中に 「訓令」 を混ぜて、社員に判断させます。 最初のうちは上手くいかないかもしれませんが、何がどう違ったのかを必ずフィードバックし、また 「命令」 をしつつ 「訓令」 するということを繰り返していきます。

このように、指示する相手の成長度合にあった指示の仕方をする必要があるのです。

指示されたことができないと、指示を受ける側を責めがちですが、指示する側も留意しなければならないことがあるということをお忘れなきよう。