昨日は、研修で講義をしていました。 ここで実感したのが、スパン・オブ・コントロールの大切さでした。

スパン・オブ・コントロールとは、管理できる範囲(管理限界)を表す言葉です。 例えば、上司が適切に管理できる部下の数は5~7人などと言われています。

研修においても同様に、講師が適切に教えることができる受講生の数というものがあります。 教える内容、教え方、時間、教室の大きさ等々にもよりますが、おそらく30-40人くらいまででしょうか。 よく小学校などで30人学級などと言われますが、講師側からすると良く考えられた制度だと感じています。

さて、このように適切に教えることを主眼に置けば、管理限界を考えて定員を設定することが重要なのですが、経営を考えれば、定員を多くすればするほど費用対効果が高くなるという相反する事情もあります。 昨今の経営事情を鑑みれば仕方のない面もありますが、管理限界を超えた講義が多くなっているように感じています。

管理限界を広げるには、小班単位で管理するという手法があります。 例えば、講義に演習を取り入れれば、演習中は班をコントロールすれば良いということになります。 そして、各人の理解度のバラツキは、班内で話し合う中で多くが解決していきます。 そこで解決しないことについてのみ 講師が個別応対すれば良いということになります。 セミナーに演習を取り入れる理由はいくつかありますが、1つにはこのような理由があります。 ですから、演習を取り入れられない科目(・・・そもそも演習が難しい、個別に取り組まなければ学習効果が得られないなど)は、管理限界を広げることが少々難しいというのが正直な所です。

また、受講者それぞれの知識や経験の差がありますので、どのような教え方をしても、①難し過ぎる、②ちょうど良い(満足)、③簡単過ぎる・・・の3者に分かれます。 ここで、適切な人数で研修が行われていれば、①③について個別に応対することで、多くの不満を解消することができます。 しかし、管理限界を超えていると・・・。

さらに、受講者が増えれば増えるほどニーズのバラツキが生じます。 全くの初心者なので言葉の意味から教えて欲しい、ある程度理解しているので難易度の高いものを教えて欲しい、事例を中心に教えて欲しい、基本はいいからすぐに役立つことを教えて欲しい・・・などなど。 管理限界を超えた状態で膨らんだニーズに応えるのは・・・至難の業です。

費用対効果を高くするという 「リターン」 を得ようとすれば様々な 「リスク」 を負わなければならず、それが受講者の理解度低下や満足度低下にもつながりかねません。

経営効率を追求すれば教育効果は低下し、教育効果を追求すれば経営に悪影響を及ぼす・・・教育産業(事業)の最大の課題は、適正なスパンの見極めであると実感した1日でした。