第16期中小企業診断士養成課程
「経営戦略策定実習1」
日時/   平成24年1月27日(金)~
主催/   中小企業大学校 東京校

 

昨日で経営戦略策定実習が終了しました。 今回の実習は、11月に行った実習から引き続いて進める形でしたので、正味の実習期間に比べて随分長い時間かけて取り組んできました。 研修生の皆さま、大変おつかれ様でした m(_ _)m

もしかして、まだこのブログを見てくれている方もいたりして・・・と思い、こっそり番外編を記しておきます。 診断のプロセスや技法、考え方等々は実習期間中に伝えておりますので、別の観点からお伝えします。

今回、当班では、本店・支店の位置付けの違いから、それぞれに適した戦略を 「事業別戦略」 という形で提示しました。 しかしながら、両店ともに事業領域の大部分は同じであることから、「戦略」 というよりは、少し 「戦術」 寄りであったと思います。 つまり、純粋な戦略提案としては、「全社戦略」 の1つのみと言えます。

そこで、考えていただきたいのが 「戦略オプション」 です。

今回、モデルとしたのは 「広域型」 の支店タイプ。 それでは、「狭商圏型」 の本店タイプで展開した場合はどうなるのでしょうか? 代表的な戦略ツールで2つのタイプを比較しながら、今後の展開を考えてみたいと思います。

まず、PPMの観点で考えると、前者は、市場成長率が高いエリア(正確には、商圏をより広域に設定していくことで成長の低下をカバーする形)で高いシェアを確保する 「スター」 を志向し(→シェアの向上過程や競合との争いの中で 「問題児」 となる懸念がある)、後者は、市場成長率が低いエリア(限定された範囲)で高いシェアを確保する 「金のなる木」 を志向することになります。

また、コトラーの競争地位戦略の観点を加えて考えると、前者は、大手との差別化の中で存在感を示す 「チャレンジャー」 を志向し、後者は、細分化された狭商圏というセグメントで独占的地位を狙う 「ニッチャー」 を志向することになります。

さらに、ランチェスター戦略の観点を加えて考えると、前者は、より品揃えを絞り込み強みを際立たせ、大手との接近戦に持ち込むなどの 「弱者の戦略」 を志向し(→こうした観点から、あまりに商圏を広域に設定すると、より遠くの地域では強者に負ける懸念がある)、後者は、弱者に対する物量戦などの 「強者の戦略」 を志向することになります。

こうした観点から考えると、「狭商圏型」 は、大きな売上や今後の市場成長があまり望めないというデメリットの一方で、競合が少ないことによるローコスト運営(販促費用の低減、無用な低価格販売の回避など)、つまり、安定的な収益が確保できるというメリットがあります。 また、狭商圏であるため不確定要素も少なく、同一基準での多店舗展開を志向すれば、早期の事業拡大も望めます。

出店エリアとしては、山間部や沿岸部、商業が衰退した小規模都市など、流通の不便な地域が候補として挙げられます。 具体的には伏せますが、この県にはこうした地域が多く存在します。 こうした地域での獲得シェアを設定し(例えば安定目標の41.7%)、当店の目標利益が確保できる需要のあるエリアを出店基準として定めれば、出店候補地の選定がしやすくなります。 今回の実習では、競合による相性一覧表を提示しましたが、この場合は、地域による相性一覧表のようなものを提示することになるでしょう。

また、更なる狭商圏を志向すれば、移動販売による新たな業態の可能性を見出すこともできるため、狭商圏であっても将来の展開に広がりを持たせた戦略オプションを提示できると考えます。

徒然なるままに私の頭の中にあったことを記しましたが、他の視点で考えてみれば、また違ったオプションが出ると思います。 次回の戦略策定の折には、是非、戦略オプションを提示する(その後にそれらを評価して提示する) ことにチャレンジしていただければと思います。

それでは、こっそり番外編はここまで。 ご清聴ありがとうございました m(_ _)m  皆さまの更なる成長を楽しみにしております♪