被災地の衣料品店を訪れたときのこと。 店主に現在の状況やこれからの展望を伺っていると、お父さんと女の子がお店に入ってきました。 ・・・どうやら、お嬢さんが中学校に入学するため、制服のサイズを測りに来たようです。

声しか聞こえませんでしたが、お嬢さんが試着しながら、店主が着心地を確認しながら、それをお父さんが見ながら ・・・ 三人でどのサイズが良いか話し合っていました。 お父さんは 「俺にはどれが良いか分らないから ●●さんに任せるわ」 と笑いながら店主に一任して一件落着。 和気あいあいとした様子に 頬笑みながら待っていました。

しかし、お父さんとお嬢さんが店を出て、店主が私に教えてくれたこと、、、実は、先程のお父さんの奥さんは津波で亡くなられ、それから男手一つで三人のお嬢さんを育ててきたのだそうです。 お父さんの気持ち、子供たちの気持ち、無念だったお母さんの気持ち、、、実は、様々な思いが 「中学校の制服」 に込められていました。

不意の告白に心が痛みました。 ・・・が、被災地の人たちが 様々な思いを押し込めて元気に生活しているのに、外から来た人が涙を見せたり動揺したりしてはいけません。 (ぐっと堪えました)

ひとしきり店主のお話を伺っていると、(意外なことに) 感謝されました。 被災した人は皆、自分の話を聴いてもらいたいのだそうです。 そして、そうした人たちがいつでも来て話ができるように、私もこの店を続けていきたい と話されました。

被災地では いわゆる 「経営理念」 が、通常支援で出会う企業とは質が異なります。

建物や機械・設備は消失、土地は未だ使えず、販路も定かでなく、取引先も未だ復旧せず、事業資金もほとんどない、、、、さらに言えば、自分の生活もままならない状況にも関わらず、店を再開する・続ける という話しが飛び交っています。

生き残った意味を一番に考えている人が 数多くいるためです。

通常ならば店を続けるのは無理と言われる状況でも、被災地では違います。 被災地の経営支援では、一般的な経営支援とは全く質の異なる考え方が必要になることを理解しながら 支援しなくてはなりません。